2012年4月17日火曜日

生物基礎の授業展開 その3 細胞とエネルギー と タンパク質

僕の学校で使っているD1学習社の教科書では「細胞とエネルギー」の単元で代謝・ATP・光合成・呼吸を扱い、やや離れたところで「遺伝情報とタンパク質の合成」としてタンパク質の性質を扱っています。

でも、代謝などの生化学反応の学習とそれを触媒する酵素としてのタンパク質の学習はひとまとまりに行うべきだと考えます。(ちなみにS研・K林・T書の教科書では同じ単元で扱っています)

「細胞とエネルギー」の単元で学習すべき重要なことは、以下のようなことだと考えます。

1.生命活動は細胞内外の化学反応(生化学反応)により支えられている

2.生化学反応は個々の反応が個別・独立的に生じる事はなく、全て連鎖的反応経路(cascadeとかchain reaction pathwayがキーワードでしょう)のなかで整然と進行してゆく

3.連鎖的反応経路はその各段階に酵素やATPが作用することにより、あたかも、自発的に進行するかの様にみえる(こんなに複雑なんだよ!の提示にはこのサイトを) 

4.酵素による触媒やATPによるエネルギー供給無しに生化学反応が進行することは(現在の常温環境下で生きている生物においては)あり得ない

以上の事をきちんと押さえないで、「呼吸って反応はこうして進むものなの」「酵素ってのは反応を触媒するの そういうものなの」って教えちゃうと、『生命現象には独自の科学論理体系が存在していて、それは物理学や化学の論理的支配から逃れたものなんだ』という誤った概念を生み出しかねません。この誤認は生命に対する神秘主義や生命似非科学の侵出を許すことに繋がりかねず、とても危険だと、僕は考えます。

そこで「細胞とエネルギー」の単元では「タンパク質」の構造にも言及しながら、生命を支えている連鎖的反応経路(cascadeとかchain reaction pathway)の見事さを伝えることに重点を置きます。

その様な背景がありますので、この単元はこのプリントの流れでやろうと思っています。

まず、生物学習の基礎として必要な物理的・化学的ことがらを伝えます。でも、問題があります。
僕の学校のカリキュラムだと新入生は「生物基礎」と「物理基礎」を学習して2年時に「化学基礎」、さらには「物理」「生物」「化学」の学習へ進みます。すなわち、新入生は中学校レベルの理科知識で生化学を学習しなければならない。たぶん、他の学校でも同じ問題が生じていると思います。

当然、生物の教師が物理的・化学的背景の基礎部分を補いながら授業を進めるしかありません。先生方の努力にかかっています。がんばりましょう。

では、プリントにそって展開の要点を見ていきましょう。

1.生化学反応の具体例を生徒に質問してどの程度の具体的な事例が出るでしょう?消化・呼吸・光合成くらいは思い当たるかも知れません。教科書で扱われているこれらも重要ですが、僕的にはDNA・RNA・タンパク質・多糖などのポリマーと、ヌクレオチド・アミノ酸・単糖などのモノマーとの双方向的変換が生命現象の根幹にあると感じています。こんな動画を見せて、「これも全て生化学反応なんだよ」といいます。(最新版はこちら。ただしやや長めです

2.エネルギーは「仕事の貯金」です。化学反応にはそのエネルギーが放出されるような(貯金をおろすような)反応や吸収されるような(貯金するような)反応があります。細胞内では放出されたエネルギーはどうなるのでしょう?エネルギーを吸収しなければ進行しない反応はどうやってすすめるのでしょう?

3.省略

4.5.同化はその反応全体を見たとき吸エネルギー反応になっています。異化はその反応全体を見たとき発エネルギー反応になっています。

同化は吸エネルギー反応。仕事の貯金をする反応。どんどん進むと貯金が増える。増えた貯金が同化産物という物質に含まれる化学エネルギーです

異化は発エネルギー反応。仕事の貯金をおろす反応。おろした貯金は現金になるよ。生化学反応における現金はATPだよ。だから、異化が進むとATPは増えるよ。でも、貯金は減るよね。

逆の反応系を一つの体系として理解させましょう。

6.7.酵素については立体構造が重要であることを考えさせましょう。こちらを参考にしてください
アミノ酸についてどのレベルまで教えるかは生徒の習熟度によると思います。十分なん受容力を持ったクラスではアミノ酸の分子構造・側鎖の特徴がアミノ酸の個別の特徴に反映されること・疎水性のアミノ酸や親水性のアミノ酸があることまで教えます。
タンパク質については大まかに機能タンパク質と構造タンパク質の違いを伝えます。

8.ATPについての基本はプリントの通りです。
ATPの分子構造はこの動画が良いと思います。

9.10.11.光合成と呼吸の化学反応を細かく憶える授業はやりません。どちらの反応も内容に立ち入ったプリントを配布しますが、その目的は、「かくも複雑なる反応の粛々と進みたるは如何に」を考えさせることです。光合成も呼吸もとんでもなく複雑な連鎖的反応経路を形成しています。それが間違いなく進む様に準備された装置が「葉緑体」であり「ミトコンドリア」です。
授業では、「とても見事なピタゴラ装置なんだ。とんでもなく精巧に出来たルーブ・ゴールドバーグ・マシンなんだ」の話をして、次の動画を見せます。

12.原核生物から真核生物への進化とあわせて学習します。

では、次は「遺伝現象と遺伝子」の単元に進みます。

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